研究概要 |
子ブタの下痢には、非病原性のものがありその多くは消化不良性で乳酸の蓄積が特徴である。乳酸利用性酪酸菌Megasphaera elsdenii(ME)は、乳酸を酪酸に変換することで大腸機能を改善するので、消化不良性の下痢の予防効果が期待できる。そこで、本研究では、MEをブタに投与するために、ブタ腸管由来MEを単離した。同時に、16S rDNA配列の特異領域に基づくプライマーを設計し、Real-time PCR(Light-cycler)による定量法を確立した。豚の成育段階に応じて、糞便から検出されるME菌数は変化し、生後4日齢までは10^3レベルを示したが、その後13日齢まで漸次増加し10^5レベルに達した。母乳を哺乳期子ブタ飼料で補うようにした14日齢から一時的な減少を示した。その後、10^6レベルに達したが、25日齢で強制離乳した直後の28日齢にも一時的な減少を示した。その後、再び増加し最終的には10^7レベルに達した。この増減のパターンから減少がおこった時期を狙って子豚にMEを投与する事が下痢抑制にとって有効ではないかと推測された。3日齢20日齢28日齢子豚を実験に供し、ME菌体を腸溶性カプセル(三生医薬)あるいは大腸崩壊性カプセル(アイセロ化学)に充填して3日間連投した。投与開始日(0)、3,7,14,30日後に糞便を採取するとともに体重測定を行った。糞便中のME菌数は、3日齢および20日齢子豚で投与開始後一過性に増加したが、その後対照群でも増加が認められ、菌数の差はなくなった。28日齢子豚では有意な差は認められなかった。MEと乳酸菌の菌数に正の相関が認められた。糞便性状は、投点群で改善が見られたが有意な差ではなかった。また、全般的な栄養状態を反映する被毛スコアが改善傾向を示した。
|