研究概要 |
本研究ではL.reuteri JCM1112^Tの全ゲノム解析データからロイテリン産生に関与するpropanediol utilization(pdu)clusterを検出した。L.reuteriのpdu clusterには、dha regulonではみられないpolyhedral organelles形成に関与する遺伝子群が存在していた。本菌ではL.collinoidesとL.brevisでは保存されているNADH:flavin oxidoreductase/NADH oxidase familyのドメイン構造を有する構造遺伝子が欠損していた。また、1,3-propanediol dehydrogenaseが発現している際、細胞内の酸化還元バランスを保つためにglycerol dehydrogenaseが利用されていると推察できる。Glycerol dehydrogenaseと1,3-propanediol dehydrogenaseが別の制御系によって調節されており、ロイテリンが多量に産生されていた。 アデノシルコバラミン(AdoCbl)生合成に関与する構造遺伝子群を本菌のpdu cluster下流で検出し、L.reuteriで特徴的だったのは、他の細菌のcob/cbi clusterでは、異なるゲノム上の離れた位置に存在しているhemABCL、cobACDおよびcysG遺伝子が、本菌においてはcob/cbi cluster内に位置していた。これにより、L.reuteriはL-グルタミン酸からAdoCblまでの生合成に関与するほぼすべての酵素を1転写単位で転写することが可能となり、他の細菌よりも効率的にAdoCblを生合成し、細胞外にコバラミンが存在しない場合でもロイテリン産生が可能であると考えられる。乳酸菌でのAdoCbl生合成に関与する一連の遺伝子群の検出は本研究が初めてである。
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