研究概要 |
平成16年度は以下の2つの実験を行った。 (1)ウシ乳腺上皮細胞のStat5リン酸化に及ぼすGHの影響について検討した結果,成長ホルモン(GH)は10〜100ng/ml、プロラクチン(PRL)は100ng/mlの濃度でStat5リン酸化を増加させた。また、刺激時間について検討を行ったところ、GHは30〜120分にかけて、PRLは30〜60分にかけてStat5リン酸化を増加させた。GH及びPRLは100ng/mlにて30分間刺激することによってStat5のリン酸化を有意に増加させた。同様に免疫染色においても、GH及びPRL刺激により細胞質中にStat5リン酸化の増加が認められた。 (2)ウシ乳腺上皮細胞のMAPキナーゼリン酸化に及ぼすGHの影響 GH及びPRL100ng/mlにて30分間刺激し,ウェスタンブロット解析及び免疫染色により解析を行った。MAPキナーゼはp44 MAPキナーゼとp42 MAPキナーゼの2つのアイソフォームを持つタンパク質である。GHはPRLと同様にp44 MAPキナーゼとp42 MAPキナーゼのリン酸化を増加させた。また、免疫染色においてもGH及びPRLによる刺激で細胞質中にMAPキナーゼのリン酸化の増加が観察された。 以上の結果から、GHはウシ乳腺上皮細胞に直接作用し,細胞内Stat5およびMAPキナーゼのリン酸化を増加させることが明らかになった。このことから,ウシ乳腺上皮細胞におけるGHによるカゼイン合成の増加はPRLと同様にJak-Statシグナル伝達経路を介して行われていることが示唆された。さらに、GHはMAPキナーゼシグナル伝達経路を活性化させタンパク質合成などを促進させていると考えられる。
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