平成15年度に本申請課題に向けて研究を施行した結果、一部明らかになった点を以下に示す。 1.めん羊脂肪細胞の三次元コラーゲンゲルマトリックス培養法を確立し、約1ヶ月に亘り生理活性を維持した脂肪細胞を培養することが可能であることを確認した。 2.めん羊成熟脂肪細胞はレプチンおよびTNF-αを合成・分泌し、それ等は成熟脂肪細胞の増殖の抑制因子として作用し、インスリンおよびIGF-Iがそれ等の合成・分泌を制御していることを立証した。 3.めん羊脂肪前駆細胞の増殖・分化がレプチンおよびTNF-αによって制御され、TNF-αは細胞のアポトーシスにより増殖・分化を抑制すること、レプチンはその能力がTNF-αよりも低いことを立証した。 4.めん羊脂肪細胞と脂肪前駆細胞との共培養法を確立し、成熟脂肪細胞共存下では脂肪前駆細胞の増殖・分化が抑制されるという知見を得た。 5.機能的ゲノムルーツを用いて、脂肪細胞の増殖・分化の分子メカニズムの一端を明らかにした。 (1)細胞骨格形成に関与する遺伝子、非筋型コフィリンの皮下および腹腔内脂肪組織における発達の違いを半定量RT-PCRにより解析した結果、ブタとは逆に黒毛和種牛においては皮下脂肪で発現が強いことを立証した。 (2)めん羊脂肪前駆細胞の増殖はMAP kinase系を介し、分化はPI3-kinase系を介して発現し、転写因子PPARγ-2の発現誘導の活性化にPI3-kinaseの活性化が必要であることを立証した。 (3)ラット脂肪細胞においてグレリンがPPARγ-2mRNAの発現を上向き調節することにより、分化を促進し、脂肪細胞形成においてグレリンが重要な役割を演じていることを立証した
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