研究代表者によりブタ精液中で発見されたリラキシン様蛋白(RLP)の精子における受精能獲得誘起とシグナル伝達機構の解明に挑戦し、種々の新知見を得た。以下にその主要な成果を記す。 1.精漿リラキシン様蛋白のブタ精子における受精能獲得誘起 クロロテトラサイクリン(CTC)法と体外受精法による解析により、精漿リラキシン様蛋白が濃度依存的に精子の受精能獲得を誘起させ、150μg/mlで最大効果を表し約60%の精子で受精能獲得を誘起させること、またこのような精子は明らかに体外受精能力を有していることを究明できた。このことから、リラキシン様蛋白は精子の受精能を司る精漿中の唯一の鍵分子であることが実証され、受精能獲得因子としての位置づけを明らかにすることができた。 2.精漿リラキシン様蛋白によって誘起されるのブタ精子の受精能獲得に係わるシグナル伝達機構の解明 精漿リラキシン様蛋白に暴露処理した精子で、細胞内cAMP濃度の上昇に続き、蛋白チロシンキナーゼ(PTK)の活性化が起こり、受精能獲得や先体反応が高効率で誘起することを各種モジュレーターを用いて究明でき、精漿リラキシン様蛋白は精子細胞膜のコレステロール放出を起点として、HCO3-の流入を促し、アデニル酸シクラーゼーcAMP-PTK系を介し、精子の受精能獲得機構に関与していることを見出せた。
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