研究概要 |
今年度の目的は細胞分化のゲノムレベルでのメカニズムの解明である。前年度に確立した骨格筋衛星細胞が多分化能を持つと言う特徴を活用して、ウシ衛星細胞が筋肉細胞であると同時に、脂肪細胞の機能を提示する場合を実験モデルとして、一本鎖RNA(siRNA)による転写阻害が細胞分化誘導のメカニズムであるとの仮説を建てて研究を行った。 筋肉細胞の特徴であるMyoDの発現をノックダウンするSiRNAを設計し、Lipofection法を用いて、衛星細胞に導入し、MyoD発現の抑制はリアルタイムPCRを用いて確認した。導入後2日日で80%、6日日で74%、12日日で29%の抑制が認められた。一方、MyoD発現の抑制に対応して、PPARγは導入2日日で16%の増加が認められた。しかし、PPARγの発現は6日日では74%、12日日では57%に減少した。このことからMyoD発現の抑制はPPARγの発現を誘導し、脂肪細胞への分化誘導を開始するが、筋肉細胞本来のMyoD発現が主体となり、PPARγ発現が抑制され、筋肉細胞としての特徴を維持している。PPARγの発現は他の脂肪細胞系譜誘導因子、例えば、CZEBPαを誘導し、分化プロセスを完了すると考えられ、siRNAによるC/EBPαへの影響も検索中である。MyoDはMyogenic regulatory factor familyの一メンバーであるので、他のメンバー、myogenin, myf5, MRF4のsiRNAの設計も進行中であり、二つの細胞系譜決定遺伝子・遺伝子産物のクロストークを解明する予定である。
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