これまでにわが国で患畜や細胞培養から分離されたペスチウイルス株を対象に、(1)現有のサーマルサイクラーを用いて申請者が開発した2段階RT-PCR法により、ウイルスゲノムの5'端非翻訳領域を増幅させ、その塩基配列を決定するとともに、(2)リアルタイムPCRの開発を並行して行い、ウイルスの定量法を確立した。通常の2段階RT-PCR法には、はじめに供試ウイルスサンプルからグアニジン・イソチオシアネート法によりRNAを抽出し、ペスチウイルスのゲノムRNAの5'端非翻訳領域の下流に位置するプライマーを用いてcDNAのファーストストランドをM-MLV逆転写酵素により、現有の恒温槽内で合成した。得られた1本鎖のcDNAを基質として、逆転写反応に用いた下流のプライマーとその上流に位置するプライマーを用いて、PCRを現有のサーマルサイクラーで行った。これにより5'端非翻訳領域からは約300塩基対の大きさのPCR産物がそれぞれ得られた。PCR産物はアガロースもしくはポリアクリルアミドのゲル電気泳動により分画し、紫外線トランスイルミネーターにより観察し、バンドを切り出した。電気泳動装置およびトランスイルミネーターはいずれも現有設備を使用した。得られたPCR産物は現有のDNAシークエンサーを用いて、ダイデオキシ法によりその塩基配列を決定した。さらに、得られた塩基配列をCLUSTAL W等のコンピュータプログラムにより解析して、ペスチウイルスの系統解析を行った。また、蛍光色素SYBR Greenlを用いたインターカーレーター法によるリアルタイムPCRを開発し、短時間で定量的な結果が得られることを明らかにした。さらにPCR産物の熱融解温度(Tm)を測定することにより、ウイルス種の同定が可能であることを明らかにした。これらの解析により、病歴の明らかな個体から分離されたウイルス株や細胞変性効果の判明しているウイルス株の遺伝学的型別がより正確かつ迅速に行えるようになった。
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