Sox(Sry-related HMG box)ファミリーは、様々な組織、細胞の分化決定に重要な役割を担う転写因子群である。このうち、マウスSox7、Sox17、Sox18は全て胎子血管内皮において共発現しているが、Sox17、Sox18に関する各々の欠損マウスは、血管系に顕著な異常を示さない。これは、恐らくSox7、Sox17、Sox18間の相補的な機能によると考えられる。我々は、Sox17の血管形成過程における機能解明を目的として、Sox17^<+/->/Sox18^<-/->マウスの表現型の解析を行った。その結果、Sox17^<+/->/Sox18^<+/->およびSox17^<wild>/Sox18^<-/->マウスは、共に繁殖可能な正常個体へと成育するのに対し、Sox17^<+/->/Sox18^<-/->マウスは、生後発達過程において一部の臓器に限局した血管異常を示し、肝臓の変性・萎縮、水腎症、卵巣の機能不全、陰嚢の腫大を伴って、生後3週齢までに約50%の個体が死亡することを見い出した。組織学的解析では、肝臓の洞様毛細血管、腎臓髄質の直細動静脈および卵巣の毛細血管の数が減少しており、一部の限局した臓器の毛細血管の新生、維持に異常が認められた。そこで、Sox17による血管形成の分子メカニズムを明らかとするため、Sox17^<+/->/Sox18^<-/->マウスにおける血管形成制御因子の発現変化について、Sox17^<wild>/Sox18^<-/->マウスと比較検討した。Sox17^<+/->/Sox18^<-/->マウスでは、肝臓洞様毛細血管、腎臓外帯の毛細血管において、TIE-1、VCAM-1の発現が顕著に減少する事が明らかとなった。以上の結果より、肝臓、腎臓における一部の血管形成過程で、Sox17がSox18と相補的に重要な役割を担うこと、および、Sox17、Sox18はTIE-1、VCAM-1の上流で機能する可能性が示唆された。
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