超強毒型鶏伝染性ファブリキウス嚢病ウイルス(IBDV)感染における致死的病態機構解明のため、超強毒株と致死的病原壊死を示さない従来株を用い、感染細胞における非構造タンパク質VP5とカプシドタンパク質VP2およびVP3の動態を蛍光抗体法により比較・解析した。また、病原性発現における各ウイルスタンパク質の機能解明を目的として、各ウイルスタンパク質の単独発現による宿主細胞の変化を観察した。 超強毒株および従来株共にウイルス感染3時間後から感染細胞の核周囲にVP5が顆粒状に認められた。感染7時間後には超強毒株および従来株感染細胞でVP5の局在に相違が認められ、従来型株感染細胞では細胞全体に網目状に、超強毒株感染細胞では細胞膜に局在する像が認められた。VP2およびVP3の動態に、株による相違は認められなかった。超強毒株および従来株からクローン化したVP5と緑色蛍光タンパク質(GFP)をそれぞれ同一細胞内で独立に発現させたところ、従来株由来VP5発現細胞では共発現したGFPの蛍光強度に変化は認められなかったが、超強毒株由来VP5発現細胞では蛍光強度が有意に減少した。VP3単独発現細胞では、アポトーシスの誘導が検出された。 株の病原性によりVP5の細胞内での動態が異なり、超強毒株では細胞膜に速やかに移行することが明らかになった。超強毒株由来VP5発現細胞でGFPの蛍光強度が減少する理由は不明だが、VP5は細胞膜の透過性に傷害を与えることが報告されており、蛍光強度の減少が細胞膜に対する傷害性の相違を反映している可能性が推察された。また、VP3の単独発現によるアポトーシスの誘導が示され、VP5およびVP3がIBDVの致死的病原性に関与する可能性が示唆された。
|