研究概要 |
人を含む動物のゲノム内にはレトロウイルスと類似した構造を持つ遺伝子が組み込まれており、宿主の遺伝子として安定な形で継代されている。これを内在性レトロウイルスというが、この配列は、全ゲノムの7%ほどを占めている。本研究では、内在性レトロウイルスが病原性レトロウイルスの感染補助因子として、生体に不利に働く機構を解明する。 本年度は以下の研究成果を得た。Tリンパ球指向性ネコ白血病ウイルス(FeLV-T)のエンベロープを被ったシュードタイプウイルス産生のパッケージング細胞を樹立した。FeLV-Tのエンベロープを被ったシュードタイプウイルスを用いたアッセイにより、FeLV-Tの機能的レセプターがどの細胞由来の細胞に発現しているかどうかを調べた。その中で、FeLV-B(FeLVサブグループB)が感染するにもかかわらず、FeLIX(内在性FeLVのエンベロープ蛋白)存在下でFeLV-Tが感染しない動物由来細胞を見いだした。その動物細胞とは、以下の5種類であった(括弧内は動物種を示す)。MDBK細胞(牛),HSN細胞(ラット),RK-13細胞(ウサギ),ST-IOWA細胞(ブタ)およびSp1K細胞(イルカ)。MDBK細胞およびHSN細胞から、mRNAを抽出、cDNAを合成し、レトロウイルスベクターであるpMXに導入し、レトロウイルス発現cDNAライブラリーを作製した。このライブラリーをパッケージング細胞であるPlat-E細胞にトランスフェクションにて導入、FeLV-Tが感染しない細胞(NIH3T3細胞など)に感染にて導入した。FeLV-Tのエンベロープに包まれたシュードタイプウイルスの中にピューロマイシン耐性遺伝子を導入した。そのウイルスをcDNA導入NIH3T3細胞に感染させた。ピューロマイシン耐性クローンを現在選択中である。今後、耐性クローンからPCR法にてcDNAを回収する予定である。
|