研究概要 |
3年間の研究により、以下の成果が得られた。 1.母親からの分離不安に対するLFの効果 幼若動物の中枢神経系機能に対するLFの生理作用を明らかにする目的で、5日齢から18日齢のWistarラットを親ケージから隔離し、子ラットの探索行動及び超音波発声(USV)を指標として不安状態を評価した。子ラットは、隔離直後から顕著な探索行動とUSVを示したが、隔離30分前にLF(100mg/kg,ip)を投与すると、探索行動及びUSVは対照群に比べて有意に抑制された。LFによるこの抑制効果はNaloxone(μ受容体),CTOP(μ受容体),norBNI(κ受容体)などのオピオイド受容体拮抗薬によって用量依存性に減弱した。さらに、一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬であるL-NAMEの前処置によってもLFの効果は消失したことから、LFはNOSを活性化することによって内因性のオピオイド作用を増強し、その結果、抗不安作用を発揮することが示唆された。また、種々の母子隔離条件による不安行動の違いから、子ラットの不安行動は母親のストレス状態に依存することが明らかとなった。 2.成熟ラットの不安関連行動に対するLFの効果 LFの抗不安作用が新生子ばかりでなく、成熟動物においても有効であるか否かを明らかにする目的で、成熟ラットにFoot-shock(FS)を与えた後に高架式プラスメイズテストを実施した。その結果、LFはプラスメイズテストのみを行ったラットに対しては有意な効果を示さなかったが、FSとプラスメイズテストを組み合わせたラットに対しては有意に心理的不安を軽減した。この抗不安効果は、NaloxoneとL-NAMEによって消失したことから、LFはNOSを活性化して一酸化窒素(NO)を合成させ、さらにFSによって活性化された内因性オピオイド機構に対して増強効果を発揮することが示唆された。また、NOの前駆物質であるL-ArginineとLFの同時投与によっても相乗的に不安行動を軽減することを明らかにした。
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