研究課題
コラーゲンによる血小板凝集は止血における最も重要な段階である。コラーゲンによる血小板活性化は動物種差が大きく、ヒト以外の動物の血小板凝集機構に関する知見はわずかしかない。コラーゲンが血小板を活性化するとき、コラーゲンは内因性ADPを放出させたり、アラキドン酸カスケードを活性化して、トロンボキサンA_2(TXA_2)を放出し、それらが2次的に凝集を強めるよう働いている。本年度は主にヒトとウシの血小板におけるADPやTXA_2の役割の相違について検討した。【平成16年度の成果】ウシ血小板では低濃度コラーゲンによる凝集はTXA_2とADPに全面的に依存し、両者のいずれかが欠けるとほとんど凝集しなかった。しかしTXA_2のアナログU46619は単独ではほとんど凝集あるいは血小板内Ca^<2+>上昇を起こさないことから、ウシ血小板ではTXA_2はADPに協力することで凝集に寄与することが明らかとなった。一方、ヒト血小板ではTXA_2はADPが存在しなくても充分な凝集を起こした。ウシとヒトの血小板でコラーゲンによるTXA_2放出量(TXA_2の代謝物TXB_2で測定)を比較すると、ウシ血小板での放出量はヒトより少なかった。遺伝性疾患Chediak-Higashi症候群(CHS)はウシでは出血が重篤に現れる。CHSウシの血小板ではTXA_2産生はそれほど抑制されていないが、ADP放出はきわめて少ないことが示された。上述のようにウシ血小板ではADPが共存しないと、TXA_2は凝集に寄与しないので、TXA_2/ADP協力関係が発揮できないことがウシのCHSでは出血が顕著に現れる原因であると考えられた。ヒトのCHSでは血小板からのADP放出が少なくてもTXA_2だけでかなり凝集に寄与できるので出血が重篤とならないと考察した。これまでウシ血小板ではTXA_2は生理的意義を持たないと考えられていたが、本年度の研究でウシでもTXA_2は重要な役割を果たすことが示された。現在、ADPとTXA_2の協力関係のメカニズムを検討中である。
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