研究概要 |
アレルゲン-IgE複合体が細胞膜表面上に存在する高親和性IgE受容体に結合するとマスト細胞は活性化し、ヒスタミンなどを放出し炎症が誘起される。先の研究において、マスト細胞では、活性化に伴いTGF-βファミリーに属するactivin Aの発現が惹起されることを明らかにした(Cell Signal.,15:605.2003)。本研究は、TGF-βファミリーがマスト細胞に対する作用、ならびにその機序の解明を日的としている。TGF-βファミリーのメンバーであるTGF-β1やactivin Aにはマスト細胞を遊走させる効果ならびに細胞増殖の抑制効果があった。また、マスト細胞の分化ならびに活性化と関連する遺伝子群の活性化も確認された(J.Leukoc.Biol.,73:793.2003;Cell.SignaL.,17:121.2005,18:256.2006)。TGF-Pファミリーによってこれらの変化が引き起こされる機構を調べるため、TGF-β1あるいはactivin Aによって比較的に早期に誘導される遣伝子を調べたところ、tocopherol-associated protein(Tap)が同定され、この遺伝子誘導はマスト細胞特異的であること、ならびにTapにはTGF-β/activinシグナルを増強する働きがあることが分かった(投稿準備中)。さらに、マスト細胞の分化には転写因子MITFが関与するので、MITFとTGF-βファミリーシグナルとの関係を調べたところ、1)MITFとTGF-β/activinのシグナル伝達分子であるSmad2/3が結合すること、2)MITFはSmad2/3シグナリングを負に制御していること、3)Smad2/3の発現量はMITFによって減少することが分かった(J.Biol.Chem.,27852032.2003)。
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