前年度に食鳥処理場内で異なる鶏群がカンピロバクターによって交差汚染されることや部分肉も汚染されることが明らかになったことを踏まえ、本年度は、カンピロバクターフリー鶏を通常のブロイラーと共に処理して菌汚染を追跡することにより、と体からと体へどのようにカンピロバクターが交差汚染するのかを調査した。 本教室で育てたカンピロバクターフリーの鶏10羽を午前に1農場、午後に2農場の鶏と共に解体処理し、湯漬け前、脱羽後、チラー前、チラー後でスワブを、解体過程で手羽とささみを採材した。また同時に農場から搬入された鶏からも同じように採材を行った。スワブはチラー前では手羽と腹腔、それ以外では手羽について行った。最初の鶏群と共に処理したフリー鶏は、湯漬け前は全て陰性であったが、脱羽過程から高率に陽性に転じた。以降の鶏群とともに処理したフリー鶏では、湯漬け前の段階からすでに陽性の物が見られた。このことから初期の汚染拡大箇所は脱羽過程であることが示唆され、その後、脱羽機の水がエアロゾールとなり、湯漬け前の鶏を汚染すると思われる。 また、分離されたカンピロバクターの遺伝子型別を行ったところ、遺伝子型は全部で6タイプ(C.jejuni 5タイプ、C.coli 1タイプ)に分類された。一つのタイプが多く検出され、中には湯漬け前からチラー後までを通じて一つのタイプが見られたものもあった。これらの事は、フリー鶏であっても、食鳥処理場においては農場の鶏と同じような割合で汚染され、また、一旦汚染されるとその菌に汚染されたまま処理過程を経ていくと言うことを示唆している。 これらのことから、カンピロバクターに汚染された鶏によって処理所の解体過程の初期からすでに汚染が拡がり、食鳥肉におけるカンピロバクター汚染が起こっていることが明らかになった。
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