研究課題/領域番号 |
15580276
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
馬場 栄一郎 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70081594)
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研究分担者 |
笹井 和美 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助教授 (70211935)
谷 浩行 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 助手 (00305658)
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キーワード | サルモネラ / Salmonella Enteritidis / 鞭毛 / 抗体調査 / 鶏 / 卵 / ワクチン / 食中毒 |
研究概要 |
S. Enteritidis食中毒の発生を未然に防ぐには感染鶏群の早期発見が重要であるが、S. Enteritidisは卵管組織内に定着、増殖するため、菌検出が非常に困難である。また、近年のワクチンの導入により、従来の血清学的手法によるワクチンと感染の区別が難しくなっている。そこで本研究ではまずS. Enteritidis投与と非投与、S. Enteritidis不活化ワクチン接種と非接種、経口と噴霧投与を比較する3シリーズの感染試験を行い、2種類のS. Enteritidis抗原、deflagellated Salmonella Enteritidis whole cell(DEWC)およびSalmonella Enteritidis FliC-specific 9kDa polypeptide(SEP9)に対する特異抗体価の推移とサルモネラ検出率との関連を調べ、S. Enteritidis対策に有効なスクリーニング法の確立を目指した。その結果、SEP9特異抗体はワクチンの皮下接種や噴霧投与といった非経口的に抗原が体内に入った場合にのみ作られ、通常の経口感染ルートでは作られないことが明らかとなった。SEP9特異抗体価の上昇とともに、菌排出が抑制されていたことから、SEP9はワクチン効果のモニターに有用であり、また、S. Enteritidis感染により菌排出の有無に関わらずDEWC特異抗体価の上昇がみられたことから、DEWCはS. Enteritidis不顕性感染鶏群の検出に有用であると考えられる。そして、これら2種類の抗体を検査することにより、S. Enteritidis感染とワクチンを区別できることが明らかとなった。 日本の養鶏場単位のS. Enteritidis汚染実態は不明瞭であり、有効なS. Enteritidis食中毒防止対策を立てるためには、養鶏場単位のS. Enteritidis汚染状況を全国レベルで把握することが急務である。そこで次に今回開発した2種類の抗体を検査する方法を用いて、市販卵の卵黄移行抗体を測定することにより、養鶏場単位での汚染状況を調査した。調査に先立ち、日齢、ワクチンプログラムの異なる9鶏群で生産された卵の抗体価を測定したところ、ワクチン接種鶏群では、高いSEP9特異抗体価が長期間保持されていた。これらの鶏群の定期的な細菌学的検査で菌が検出されていないことから、SEP9特異抗体価の保有によりワクチンの有効性が維持されることが確かめられた。次に、10万羽以上飼育している日本の養鶏場の中から、197養鶏場の201鶏群で生産された市販パック卵をそれぞれ40個ずつ購入し、DECWおよびSEP9特異抗体価を測定したところ、全鶏群の22.3%が両特異抗体価とも高い値を示しワクチン接種を受けていたと考えられ、一方、全鶏群の34.3%がDECW特異抗体価のみ高い値を示しS. Enteritidis感染の可能性が示唆された。この調査により日本の養鶏場単位のS. Enteritidis抗体保有率が初めて明らかとなり、ワクチン接種を含めS. Enteritidis対策が不十分であることが判明した。S. Enteritidis食中毒防止のためには、S. Enteritidis感染鶏群の検出、S. Enteritidisワクチン効果のモニターリングが重要であり、本研究で開発した測定法は養鶏場における汚染状況を把握するための有効な手段になると考えられる。
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