研究概要 |
mv(myelin vacuolation)ラットは中枢神経系の空胞形成を特徴とするミュータントであり,その病態は膜蛋白アトラクチン(Atrn)のヌル変異による.本研究はmvラットの病理発生を明らかにし,ミエリン形成・維持に関わるAtrnの機能を解明する目的で,mvラットのグリア細胞動態に注目し解析した.【材料・方法】2〜24週齢のmvおよび対照(ヘテロ型または野生型)ラットを経時的に観察した.腰髄より凍結切片を作製し,抗CNPase抗体,抗GFAP抗体,OX-42抗体,およびOX-6抗体を用いて,各種グリア細胞の動態を評価した.2,8週齢のmvおよび対照ラットの腰髄凍結切片を作製し,PLPおよびPDGFαR mRNAを認識するRNAプローブを用いたin situ hybridizationにより,オリゴデンドロサイトとその前駆細胞の動態を検討した.【結果と考察】mvラットの脊髄白質では,2週齢よりミエリン低形成,ミエリン層の菲薄化・解離がみられ,病変は週齢に伴って進行した.各週齢のmvと対照ラット間のオリゴデンドロサイト数に有意差は認められなかった.mvラットの脊髄白質および灰白質では,2週齢からアストロサイトの増数と腫大が観察され,ミエリン病変に一致して認められたことから、ミエリン病変と関連する変化と考えられた.6週齢以降のmvラットでは,ミエリン病変の主座する白質よりも,灰白質に多数の活性化ミクログリアが認められた.正常では神経細胞にアトラクチンが発現するとされ,アトラクチン欠損がミクログリアの活性化を将来し,間接的にミエリンを障害している可能性が示唆された.また、mvおよび対照ラット間において,PLP陽性細胞数およびPDGFαR陽性細胞数に明らかな変化は認められなかった.
|