犬においてワクチン接種後の副反応としてアナフィラキシーなどワクチン成分に対するアレルギー反応が認められ、獣医学分野で大きな問題となっている。このワクチン接種後のアレルギー性副反応の原因アレルゲンを検討したところ、ワクチンに含まれる牛胎児血清(FCS)成分や安定剤(ゼラチン)であることをこれまでに明らかにしている。 本研究においてはFCS中の原因アレルゲンを検討するためにイヌIgE抗体を検出するできるwestern blot法を確立した。牛肉を抗原とし、牛肉に対してIgE抗体を持つ犬の血清を用いてwestern blotを行った結果、牛肉成分に対するバンドを検出した。次に、本western blot法が牛肉成分に特異的に結合したIgE抗体を検出しているか検討するため、2次抗体(ヤギ抗イヌIgE抗体)とリコンビナントイヌIgE抗体を結合させ同様なwestern blot法を行った(抑制試験)。その結果、牛肉に対するバンドは消失した。このことから、本western blot法がイヌIgE抗体を特異的に検出していることが証明された。 さらにこの方法を用いてFCS中のアレルゲンの解析を行ったワクチン接種後アレルギー反応を起こしたイヌのプールした血清(陽性血清)、およびワクチン接種後にアレルギー反応を起こさなかったイヌの血清(対照血清)を用いた。FCSを抗原とし、陽性血清を用いたwestern blotにおいては、68kDa付近に強いバンドが、75kDa付近に弱いバンドが検出された。分子量から68kDa付近のタンパクとして牛血清アルブミン(BSA)が疑われたため、BSAに対するwestern blotを行ったところ、BSAに対する強いバンドが検出された。一方、コントロール血清においては、FCSおよびBSAに対するバンドは検出されなかった。以上の結果から、BSAがFCS中に存在するアレルゲンの1つとして同定された。
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