研究課題
本研究では、まず現在まで不明であったイヌのc-Met cDNA完全長のクローニングを行うと共に、組織分布の検討を行った。その結果、イヌc-Met cDNAは4419bpで、Open reading frameは24のシグナルペプチドと1358のタンパク翻訳領域を含んでいることが明らかになった。また、イヌのc-Met遺伝子は、ヒト(89%)、マウス(85%)、ラット(87%)、ニワトリ(68%)、およびカエル(80%)と高い相同性があることも明らかになった。さらにイヌc-Met遺伝子は、臨床上健康なイヌでは、肝臓以外にも末梢血単核球、骨髄、腎臓、肺といった24種の組織において発現が認められ、これら組織の発生や再生に関与している可能性が考えられた。また、再生肝におけるc-Met遺伝子の発現量の検討したところ、肝部分切除72時間後のc-Metの発現量は、切除前と比較して、約2倍に上昇していることが明らかとなり、肝再生時にHGF/c-Metシグナル伝達が重要な役割を果たしているものと考えられた。次に骨髄細胞から肝臓細胞への分化が可能であるか検討するため、イヌ骨髄細胞に肝細胞増殖因子(HGF)を添加して培養を行い、肝臓細胞への分化誘導を試みた。その結果、培養28日目には肝臓細胞様の形態の細胞へと分化したことが認められたばかりでなく、アルブミン遺伝子の発現も認められた。さらに、これら細胞を肝臓細胞に特異的なタンパクであるアルブミンおよびCK18にて免疫染色を行なったところ陽性細胞が検出され、肝臓細胞の性質をもつ細胞へ分化したことが証明された。さらに、骨髄細胞から肝細胞の分化誘導において、HGF/c-Metシグナル伝達系が関与しているかどうか検討するために、c-Metの自己リン酸化を特異的に抑制するc-Met改変ペプチドを用いた検討を行なったところ、肝細胞の分化誘導は著しく阻害された。本研究の結果から、イヌの骨髄細胞から肝臓細胞の特徴を有する細胞を分化誘導することが可能であることが明らかとなり、その分化にはHGF/c-Met伝達経路が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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