研究概要 |
畑地の深部を想定した土壌カラムによる脱窒速度実験を室内で行った。実験は,カラムの上部に水分不飽和土壌(以下,不飽和層)カラムの下部に水分飽和土壌(以下,飽和層)を充填し,地下水位が比較的浅い畑地の深部を切り出した状態を想定した.カラム全長を80cmとした.供試土壌として、東京大学田無農場の黒ボク表層土10〜30cmを用い,飽和層の土壌については蒸留水で洗浄したものを用いた.当土壌をρd=0.82g/cm^2で充填し,飽和層の体積含水率θ=65.22%となった.飽和層の土壌にNO_3-N濃度溶液と炭素を全層均一になるように与え,水は静止状態とした.地表面から供給される酸素の影響をみるために不飽和層の厚さを変化させ,飽和層のNO_3-N濃度を測定した.その後,不飽和層を20cmに固定し,不飽和層の水分量,投入炭素量を変化させて飽和層のNO_3-N濃度を測定した.各実験の初期NO_3-N濃度溶液を300mg/Lとした.カラムを温度一定(16℃)とした暗室バイオトロン内に設置した.また,カラム分解後に試料を炉乾して水分量を測定した. その結果,不飽和層の厚さによって飽和部分の還元の度合いは異なり,不飽和層50cmでは,不飽和層8cm,20cmと比較してNO_3-N濃度が高く、深度によってその濃度が異なった.脱窒の進行速度は,投入炭素量の多いほうが速く進行した.この時のEh値に差は認められなかった.また,地表面からの深さによる脱窒の進行速度の差については,炭素量の少ない条件下の方が顕著に表れた.炭素量の少ない条件下で,深部の脱窒の進行速度が早かったことは,還元の度合いが大きく影響したと考えられる.また,カラムの深部で濃度分布が上昇した原因としては,Ehの値が若干,酸化状態となった影響と,上下の溶液密度差による対流が生じたことが考えられる.他の実験でも同様の傾向が認められた.
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