研究概要 |
エストロゲン様化学物質に対する植物による浄化システム構築の可能性を知るために、本年はハーブ類および新たな選抜植物を対象に水面栽培実験を行い、水中濃度変化および植物への影響を種子から発芽させ幼苗期における影響を検討し、これらの結果を受けて成株期についても検討した。さらに水生生物(メダカ)の生育影響および誘発される血中ビデロゲニン濃度の植物の水面栽培による低減効果を知るために、暴露実験の一部を行った。その概要を示す。 1)エストロゲン様化学物質として農薬の除草剤のAtrazineおよび殺虫剤のBenmoylを対象に、設定濃度15μg/Lから500μg/Lの比較的低濃度区において、植物の種子から発芽、約3週間の幼苗期の植物を作成し、水面栽培実験により生育影響および水中濃度低減の効果の検討を、HPLC,蛍光吸光装置およびELISA法により行った。 Atrazineの結果から、約20種類のハーブ(ウオータークレス、ローマンカモミール、ディル、チャービル、スイートバジル、ルー、ルバーブチャードなど)は一般的な農業水域と同程度濃度では、いずれも生育阻害は少なく水中濃度も低下傾向にあった。さらに500μg/Lにおいても吸収効果を示した。なかでもチャービル、ルー、スイートバジル、ディルは耐性もあり、水中からの除去効果が大であることが判明した。また、オオムギのふじ二条は極めて浄化能力が高く水域浄化に有効であると推測された。 2)水中のエストロゲン様化学物質高濃度区における成株期の植物による吸収除去の可能性は、先の低濃度区における除去効果が大であったハーブ類(シソ科、セリ科、キク科、ミカン科、アカザ科、アブラナ科)及び水稲の中国広西省1ならびにオオムギの赤神力、ふじ二条が極めて吸収除去能力が大と判明し、汚濁水の浄化策あるいは汚染防御策に適応できることが推測される。2,500μg/L〜6,000μg/Lの高濃度区においても、これらの植物は耐性があり成育も旺盛で水中濃度の低下傾向は顕著であり、汚濁の水環境修復への適用の可能性が示唆された。 3)これら陸生植物の水面栽培への適用によって、良好な生育と水中濃度低減効果の作用様式を知るたに、乾燥土、湿土、水面の水分環境の異なる栽培環境で、オオムギを種子より栽培して、根部組織の断面構造を顕微鏡写真により維管束に対する導管率を検討した。その結果、水面栽培により導管が増大し、構造変化を起こしている興味ある現象が確認され、その詳細を検討している。 4)エストロゲンによる水生生物のメス化の影響を知るために、ヒメダカへのAtrazine暴露により誘発される血中ビドロゲニンをELISAにより測定し、その作用を確認した。同時に植物の水面栽培によりAtrazineの水中濃度低減と血中ビドロゲニン濃度軽減傾向があることが判明した。
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