1 水域における環境ホルモン様物質の生物影響とその低減策を検討するためにAtrazine及びBenomylを対象に、ヒメダカ(Oryzais latipes)を用いて暴露実験を行い、血液中のヒドロゲニン濃度(VTG)を指標として、環境ホルモン様物質のエストロゲン作用の評価・検討を試みた。Atrazineの0〜100μg/LにおけるVTG濃度は徐々に上昇する傾向にあり、環境ホルモンとしての影響が推察された。これらに同時に特定植物を栽培すると水中Atrazine濃度が低減され、メダカの血中VTG濃度も低下し、ファイトレメディエーション効果が明確に認められた。因みに、対照区の雌メダカの血液中のVTG濃度に対し、植物栽培処理区では濃度低下し、ホルモン様作用が抑制されたことが確認された。Benomylについても同様の傾向が確認された。植物種では根部の成長が大きい麦類に効果が顕著なことも判明した。 2 環境ホルモン様物質による汚染水域を想定し、暴露実験から植物による収奪能の試算を行い、水域浄化のゾーニングを検討した。特定植物による水域におけるBenomylの収奪量の試算では、1ha当たりコシヒカリ、赤神力及びふじ二条大麦でおよそ13〜17kg/haの収奪能力があると推察された。同様のAtrazineについての試算では、Benomylの1/10程度の収奪能力で、根に対する影響の強さが示された。これらの植物に他の植物の混植により水域からの収奪効果が増大することが推察され、植物による水域のファイトレメディエーションは有効であると推測した。上記の結果から、対象物質の毒性、濃度、水域の流量などにより、高収奪能植物を順次配置、同時に多種の陸生植物を混植する手法で、水浄化・水汚濁防止システムにより、水域に適したファイトレメディエーションの有効活用が可能と推察された。
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