ゼロエミッション型浄化槽で排出された糞便は、エアレーションタンクで曝気されて酸化分解を受け、その後オークチップ槽に入る。ここでは生物学的処理が行われていると考えられているが、その中で行われているメカニズムは解明されていない。そこで、本年度は分子系統学的手法を用いて細菌群集構造解析を行い、処理メカニズムの考察を行った。 オークチップを採取し、ミキサーで粉砕してから槽内の汚水に懸濁した。懸濁液からの染色体DNAの抽出をベンジルクロライド法のみ、超音波処理とベンジルクロライド法の併用、フレンチプレス処理とベンジルクロライド法の併用の3種類行い、最適抽出条件を決定した。PCRにより16S rRNA遺伝子を増幅し、変性剤濃度勾配電気泳動(DGGE)法により単一塩基配列を含むバンドとして単離した後、シークエンスし、分子系統学的解析を行った。 染色体DNAの最適抽出条件を検討した結果、超音波処理を600W、出力7で30秒間処理後、ベンジルクロライド法を用いる方法が最適であることが分かった。PCR増幅断片は一度だけのDGGEでは単一の塩基配列だけを含むバンドとしては単離できず、変性剤の濃度勾配を変化させて複数回繰り返し、12本のDNAバンドとして得られた。系統解析の結果、12本のバンドのうち8本がCytophaga-Flavobacterium-Bacteroides (CFB) groupに位置し、その他Eubacterium tenueと同じクラスターとなったバンドや、Ochrobactrum属と近縁なバンド、Gram-positive low GC groupに位置したバンドがあった。 以上の結果からオークチップ槽における主要な細菌はバンド数と強度から評価してCFB group細菌が卓越して存在していると考えられる。これら多種にわたる細菌の機能によりゼロエミッション型浄化槽の処理が行われていると思われる。
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