ゼロエミッション型浄化槽では、屎尿はエアレーションタンクで曝気されて酸化分解を受けてから木材チップ槽に入る。そこでは生物学的処理が行われていると考えられているが、その中で行われているメカニズムは解明されていない。そこで、昨年度は実際に稼働している浄化槽の細菌群集構造を分子系統学的手法で解析し、処理メカニズムの考察を行った。 染色体DNAの最適抽出条件を検討した結果、超音波処理を600W、出力7で30秒間処理後、ベンジルクロライド法を用いる方法が最適であることが分かった。PCR増幅断片は一度だけのDGGEでは単一の塩基配列だけを含むバンドとしては単離できず、変性剤の濃度勾配を変化させて複数回繰り返し、12本のDNAバンドとして得られた。系統解析の結果、12本のバンドのうち8本がCytophaga Flavobacterium-Bacteroides (CFB) groupに位置し、その他Eubacterium tenueと同じクラスターとなったバンドや、Ochrobactrum属と近縁なバンド、Gram-positive low GC groupに位置したバンドがあった。 昨年度末から本年度は実験室レベルの大きさのモデル浄化槽を構築し、継時的に水質の分析や細菌群集構造の解析を行った。運転開始してしばらくは、リン、窒素、BOD、CODの除去が確認され、モデル浄化槽が機能していることが確かめられた。しかし、運転日数が経つにつれて塩濃度は徐々に上昇し、それに伴ってBODの除去率も少しずつ悪くなっていった。細菌叢解析の結果、実稼働浄化槽と同様にCFB group細菌が卓越して存在し、Thermoanaerobacter属、Leuconostoc属、Cytophaga属、Vibrio属、Planctomyces属、Ruminobacter属、Clostridium属、Oxalophagus属、Chitinophaga属、Sphingobacteriales鋼、Microbulbifer属に含まれる細菌の存在が確認された。 以上の結果からオークチップ槽における主要な細菌はバンド数と強度から評価してCFB group細菌が卓越して存在していると考えられる。これら多種にわたる細菌の機能によりゼロエミッション型浄化槽の処理が行われていると思われる。また、塩濃度の上昇に伴う浄化機能の低下が示唆され、その対策を講じることが重要であると考えられる。
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