研究課題/領域番号 |
15580303
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
松浦 史登 福山大学, 生命工学部, 教授 (10088445)
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研究分担者 |
太田 雅也 福山大学, 生命工学部, 助教授 (00203802)
池口 陽子 福山大学, 生命工学部, 助手
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キーワード | 油資化性酵母 / バイオサーファクタント / MEL / MML / β-酸化 |
研究概要 |
分子種毎に単離したMEL及びMML糖脂質の界面活性を測定したところ、界面活性能は、糖脂質の脂肪酸の鎖長に大きく影響され、生産される糖脂質の脂肪酸は、最大の界面活性作用を示す鎖長になるように制御されていることが示唆された。さらにMEL-AおよびMML-Aの構成脂肪酸として存在している2種類の炭素数10の不飽和脂肪酸の二重結合の位置を、オスミニウム酸化法を用いて解析したところ、それぞれカルボキシル末端から数えて4番目と5番目の間(C10:1(4))と3番目と4番目の間(C10:1(3))であることがわかった。このうち、C10:1(4)は、油脂中のオレイン酸が4回のβ-酸化を受けて生成してくる中鎖脂肪酸で、C10:1(3)は、C10:1(4)が次のβ-酸化を受ける時の反応中間体として存在する形であった。 脂肪酸組成の異なる12種の植物油脂のそれぞれを唯一の炭素源として用いてTM-181株が生産した糖脂質の解析を行ったところ、生産される糖脂質のタイプには用いた油による変化はなく、MEL-B(生産される糖脂質の約90%)と少量のMEL-Dが認められた。生産される糖脂質の量は、不飽和度の最も高いアマニ油を用いた場合が生産が最も高く、飽和脂肪酸の多いパーム油や椰子油では生産量が少なかった。さらに、糖脂質の構成脂肪酸には、その鎖長と不飽和度に顕著な違いが認められ、大豆油のようなC18:2の脂肪酸が多いものでは、比較的鎖長の長い不飽和脂肪酸C14:2が多く、C18:1含量の高いオリーブ油や米糠油になると鎖長が短いC12:0や二重結合の少ないC14:1の割合が高くなっていた。さらに、飽和脂肪酸の多い椰子油やパーム油を用いた場合では、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸はほとんど認められず、椰子油においてはC8:0とC12:0で構成されている糖脂質だけが生産されていた。これに対して、アマニ油のようなC18:3を含む油で生産された糖脂質の脂肪酸は、C14:3やC12:2あるいはC10:2と二重結合の数の多い脂肪酸が多く、さらに鎖長の短いC8:0の含量が、その他の油を用いた場合に比べて極端に少なくなっていた。これらのことから、糖脂質の脂肪酸組成は、炭素源として用いた植物油の脂肪酸組成、特に不飽和度に大きく依存しており、炭素源として用いた植物油の脂肪酸がβ-酸化によって必要な鎖長にまで分解され、それがそのまま糖脂質の合成に利用されているものと考えられた。
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