ホタテガイ中腸腺やイカ肝臓は、有害重金属であるカドミウムを高濃度に含むため水産系廃棄物として扱われている。本研究では、これら有機性水産廃棄物の大部分を可溶化し、かつカドミウムを溶液に選択的に遊離させる酵素の取得を目的として、今年度は、ホタテガイ中腸腺やイカ肝臓を効率良く加水分解する微生物を自然界からスクリーニングした。得られた成果を以下に示す。 (1)道南地方50箇所で採取した土壌試料と活性汚泥を微生物源として、ホタテガイ中腸腺・イカ肝臓をそれぞれ炭素源・窒素源とする液体培地中で集積培養した。植え継ぎを12回線り返し、単集落分離法により菌を単離した。その結果、ホタテガイ中腸腺集積培養系からは8種類の菌株が、イカ肝臓集積培養系からは8種類の菌株が得られた。これらの菌株の細胞形態ならびにグラム染色性を観察した。 (2)これらの菌株のタンパク質分解活性を評価するために、スキムミルク含有Luria-Broth寒天培地上でのハロ形成能力、ならびにAnson-荻原氏変法によるミルクカゼインの分解消化能力の測定を行った。その結果、高いタンパク分解活性をもつ菌株が、ホタテガイ中腸腺培養系からは2株、イカ肝臓培養系からも2株得られた。 (3)(2)で得られた高活性菌株を用いて、実際のホタテガイ中腸腺タンパク質の可溶化試験ならびにイカ肝臓タンパク質の可溶化試験を行った。その結果、ホタテガイ中腸腺系では1種の菌株において、また、イカ肝臓系では、2種ともに高い可溶化率(コントロール試験に比較して)が得られた。次年度は、これら、高活性菌の、培養上清から硫安処理による沈殿生成、生成タンパク質の各種精製操作を行い、酵素粉末の取得を行う。
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