ホタテガイ中腸腺やイカ肝臓は、有害重金属であるカドミウムを高濃度に含むため水産系廃棄物として扱われている。本研究では、これら有機性水産廃棄物の大部分を可溶化し、かつカドミウムを溶液に選択的に遊離させる酵素の取得を目的として、市販酵素のスクリーニングならびにホタテガイ中腸腺やイカ肝臓を効率良く加水分解する微生物を自然界からスクリーニングし、その有効性を検討した。得られた成果を以下に示す。 (1)種々の市販酵素を用いてホタテガイ中腸腺を可溶化し、カドミウム収着細菌によるその可溶化液からのカドミウム分離に対する酵素の効果について検討した結果、ホタテガイ中腸腺の可溶化率が80%を超える酵素が見出された。また、可溶化率は60%だが、その後の菌処理によるカドミウム分離率が96%の酵素も見出すことができた。 (2)前年度にスクリーニングした結果得られた高活性菌株を用いて、モデル基質でのタンパク分解活性を調べた結果、強力なプロテアーゼ活性をもつ菌株が得られた。実際のホタテガイ中腸腺タンパク質の可溶化試験ならびにイカ肝臓タンパク質の可溶化試験を行った結果、ホタテガイ中腸腺系では1種の菌株で、イカ肝臓系でも、1種の菌株に高い可溶化率(コントロール試験に比較して)が得られた。スクリーニングした高活性菌株を同定した結果、一般的に高いタンパク分解活性をもつことが知られているBacillus属の細菌が存在した。 (3)カドミウムを含まない水産廃棄物であるホタテガイ生殖巣を可溶化する微生物のスクリーニングも検討した結果、高い可溶化活性をもつ微生物が得られた。さらに、市販酵素でホタテガイ精巣を可溶化した結果、ゲル状の物質が得られるという興味深い現象を発見した。
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