本年度は、多様なヒト軽鎖遺伝子を、いかにしてLight chain shiftingによって発現させ、触媒活性を有する軽鎖遺伝子をスクリーニングするか、について重点的に検討した。その結果、まず、主要な緑茶カテキンの一種であるエピガロカテキンガレート(EGCG)に、強いLight chain shifting誘導活性があることを見いだした。また、このEGCGによるLight chain shifting誘導活性は、EGCGが生体内に吸収され血中に移行可能な濃度において観察されたことから、EGCG摂取による生体内における組み換え誘導の可能性が示唆された。さらに、この誘導が、抗体遺伝子組み換え誘導における律速過程とされる胚型転写の促進によるものではないことも併せて明らかにした。これまでの研究から、カフェインに強いLight chain shifting誘導活性を見いだしており、その誘導活性が抗体遺伝子座のDNA切断の促進にあることを明らかにしてきた。しかしながら、なぜDNA切断の促進が起こるのかは明らかとなっていなかった。そこでこのメカニズムを明らかにするため、切断を受ける遺伝子領域におけるヒストンアセチル化を検討した。その結果、カフェインはDNA切断領域のヒストン特異的なアセチル化を誘導すること、また、EGCGも同様にDNA切断領域特異的なヒストンアセチル化を誘導することを明らかにした。
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