研究概要 |
細胞内の主要なタンパク質分解経路であるユビキチン-プロテアソーム系は、細胞周期の制御や動物の抗原提示や植物の自家不和合性の発現など、様々な生理機能の調節に係わっている。本研究では、ユビキチン-プロテアソーム系に関係する新たな複合体を単離すること、ユビキチン-プロテアソーム系複合体の形成制御機構を解析することを目的とする。 本年度は、イネで発見したプロテアソーム19S調節因子サブユニットの重複遺伝子産物の発現量をイネの様々な組織で調べ、組織による19S調節因子のサブユニット構成が異なることを明らかにした(Shibahara, et al.)。また、酵母の20Sプロテアソームのサブユニットのリン酸化部位を決定した。さらに酵母での20Sプロテアソームや19S調節因子の翻訳後修飾を網羅的に解析し、細胞周期や環境変化による翻訳後修飾の変化を解析するための基礎的なデータを得た。抗体カラムやタグを導入したサブユニットを酵母細胞で発現させることにより、様々な細胞から簡便にプロテアソーム複合体を調製できるようになった。今後は、翻訳後修飾と複合体構成や細胞の状態との関連を分析し、複合体の形成制御機構を解析する予定である。ユビキチン化酵素については、タグを導入したサブユニットを酵母細胞で発現させるベクターを構築した。酵母細胞での発現と複合体の精製法を検討している。導入するタグは、現在、Hisx6タグを検討しているが、より純度の高い複合体を得るためにTAPタグの導入も検討中である。複合体の組成や翻訳後修飾の解析に質量分析装置は必須である。主としてESI-Qtofを用いたハイスループットな分析システムの構築も行っており、サブユニット組成や翻訳後修飾の解析に必要なシステムが完成しつつある。
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