本研究はいもち病菌の感染時に機能する遺伝子群の解析を通して植物病原性の発現、中でも感染時に分化する感染必須器官である付着器の分化誘導に関わる遺伝子群の機能を明らかにすることを目的とし、これまでの研究で得られた固体基質表面の物理的因子の認識に関わると思われる遺伝子CBP1について、さらに解析を行った。同遺伝子は胞子発芽管では顕著に発現しているが、栄養菌糸成長時には、ほぼ完全に抑制されているため、この発現パターンが感染時に機能する遺伝子群のうち一つのグループに共通するものではないかと考え、同遺伝子のプロモーター領域の解析を行った。その結果、プロモーター領域のうち、200bp以内の特定の領域において栄養菌糸成長時の発現抑制に密接に関わる調節領域が存在することを明らかにした。現在さらに解析を進めている。さらに、感染ステージに発現する遺伝子群のライブラリー中より、CBP1に近い発現特異性を示す一つのクローンB19の遺伝子破壊体を作出したところ、付着器形成能の低下と植物体内での進展能力の低下が見られ、本遺伝子は器官分化と病原性発現の両方のステージで何らかの役割を持っていることが示唆された。B19は細胞内シグナル伝達経路の遺伝子との相同性を持っておらず、単なる遺伝子発現調節機能のかく乱に寄るものではないと考えられたため、同遺伝子の全長の構造に着いて解析を進めるとともに、その細胞内局在性および機能について解析を開始した。
|