平成15年度の研究において特徴的な発現特異性と細胞内局在性を示す遺伝子として研究を進めたCBP1についてさらに解析を行なった。局在性については、タンパク自体に疎水性のアミノ酸配列ドメインをほとんど全く持たないにもかかわらず細胞膜に結合している可能性が示唆され、修飾による膜結合型タンパク質である可能性が高まった。また、同遺伝子の示す、胞子発芽管では強く発現するが、栄養菌糸ではほぼ完全に発現抑制されているという特徴を支配する転写調節領域について絞り込みを行ったところ、プロモーターの上流配列のうち約50bp中に栄養菌糸での発現抑制に関わる配列を持つことが明らかとなり、その中に特徴的な塩基配列が2コピー存在することを見いだした。本成果については投稿準備中であるが、糸状菌における遺伝子発現制御機構に関する有益な知見を与えるものと考えている。さらに、CBP1を見いだしたディファレンシャルライブラリー中に存在した遺伝子LPL1について遺伝子破壊体を作成し、その形質を検討した。同遺伝子はリゾフォスフォリパーゼをコードし、いもち病菌が植物感染時に必須な機能とする付着器の膨圧発生に必要なリン脂質の代謝に何らかの役割を持つことが示唆された。膨圧発生に対するグリコーゲンからのグリセロール生成はよく知られているが、リン脂質の寄与に着いてはまだ不明な点が多く、そちらの経路の重要性を強く示唆する結果であると言える。
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