研究概要 |
ガングリオシドは細胞膜の構成成分として脳や神経系に多く存在し、基本的かつ動的な生命現象に深く関与する重要な生理活性生体成分であることから、その分子機能の解明が急がれている。この様なガングリオシドは哺乳類には広く存在しているが、近年無脊椎動物である棘皮動物よりこれまでにない新たなガングリオシドが単離された。その新規ガングリオシドの生物活性には非常に興味が持たれるが、微量成分であるためにその生物活性評価を行うことは難しい。そこで新たに単離されたイノシトールフォスフォセラミドを有するガングリオシド(CJP2)の生理活性機構の解明や創薬基礎研究に貢献することを目的とし、ガングリオシド(CJP2)をシアル酸、イノシトール、セラミドの3つのフラグメントに分けてその立体選択的全合成を行うことを計画した。 1.ガングリオシドのイノシトール部位の合成はD-グルコースを出発原料とし、高ジアステレオ選択的1,2-付加、Wittig反応、閉環メタセシス、面選択的四酸化オスミウム酸化を経て、高ジアステレオ選択的かつ任意の位置に所望の保護基を有するイノシトール誘導体合成に成功した。 2.シアル酸部位はWittig反応、Sharplessの不斉エポキシ化を経、Mitsunobu反応によるアミノ基の導入とα-ケト酸誘導体への変換を経て行い、現在最終段階の脱保護を検討中である。 3.セラミド部分は既存の方法により供給可能であるため、今後イノシトール部位とシアル酸部位をグリコシル化により結合させ、その後アミダイト法によりセラミド部分と結合させてCJP2の全合成を行う。
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