研究概要 |
無脊椎動物である練皮動物に局在するガングリオシドは、極微量しか単離できないことから生物活性評価サンプルの供給すら容易ではない。近年、イノシトールホスホセラミド(IPC)を構成単位とするCJP2が棘皮動物のニッポンウミシダから単離された。本化合物はホスファチジルイノシトールとスフィンゴミエリン、ガングリオシド等の重要な生理活性化合物の融合した極めて新奇な構造を特徴とする。本研究ではCJP2の特異な生理活性の解明に貢献するために、合成化学的なアプローチによりmyo-イノシトール、セラミド、シアル酸グリカールの各構成成分をすべてグルコースから合成する研究を行った。 1myo-イノシトール誘導体の合成 グルコース由来のアルデヒドと有機銅試薬の高ジアステレオ選択的1,2-付加、Wittig反応、閉環メタセシスを鍵反応とし、重要中間体となるconduritol B誘導体を合成した。本誘導体のアリル位水酸基上アシル基側からの四酸化オスミウム酸化が優先的に進行することを見出し、複数の異なる保護基を所望の位置に有するmyo-イノシトール誘導体を立体選択的に合成する方法論を確立した。 2.セラミドの合成 グルコースからの既知の合成法を改良し、より効率的に合成を行った。 3.シアル酸グリコシルドナーの合成 シアル酸と他の糖とのグリコシル化を考慮し、グルコースからWittig反応、Sharpless不斉エポキシ化反応、水酸基へのマロニル基の導入、Eschenmoser's saltを用いたオレフィンの構築、閉環メタセシス反応を経て直接的にシアル酸グリカール誘導体を合成した。
|