研究概要 |
二環性[3.1.0]骨格を有する分子の不斉構築法についてはいくつかの手法が考えられるが、最も実用性に富むものとしては、シクロペンテノンに対するシクロプロパン化反応が優れている。とりわけ硫黄イリドを用いた三員環形成は、ラセミ合成ですでに確立された手法である。この反応をエナンチオ選択的に行なうための最初の段階として、光学活性リガンドの設計を検討した。ここでは、軸不斉を有するビフェニル誘導体の合成を目的として、次の二つの研究を行なった。 1.銅試薬によるベンジルベンゾエートの分子内ビアリールカップリング反応 芳香環上が高度に官能基化されたベンジルベンゾエート類に対して銅の存在下、加熱を行なうことにより、分子内ビアリールカップリング反応が進行することを期待した。しかしながら、分子間反応が優先して起こり、目的物はごく低収率で生じるに過ぎないことがわかった。(Heterocycles,2003,67,521-528.) 2.パラジウム試薬系によるフェニルベンゾエートの分子内ビアリールカップリング反応 高度に酸素官能基化された芳香環部位を有するフェニルベンゾエート類に対して、パラジウム-ホスフィン試薬系を用いて反応性を検討した。その結果、分子内ビアリールカップリング反応が速やかに進行し、ジベンゾピラノン誘導体の合成に成功した。 3.ジベンゾピラノン誘導体の還元的不斉開環 ジベンゾピラノン誘導体に対して、ボラン-光学活性オキサアザボロリジンを作用させ、ラクトン環の不斉開環反応を検討した。低温条件下反応を行なえば、光学活性ビフェニル誘導体が高い光学収率で生じることを見いだした。また、得られたビフェニル誘導体の絶対配置を決定した。(Tetrahedron Lett.,2004,45,2327-2329.)
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