ビシクロ環系2-アミノアルコールを鋳型として、インプリンティングポリマー合成した。鋳型とした2-アミノアルコールと、構造の異なる2-アミノアルコール類の吸着性の違いを、溶液状態でポリマーと混合した上澄みのHPLC分析で調べたところ、鋳型分子の選択的吸着が認められた。 さらに、ラセミ体の鋳型2-アミノアルコールを用いて、エナンチオマー間の吸着度の違いを確認し、ラセミ体からある程度の光学純度を持つもの(溶液)へ変換できる可能性を見いだした。 さらに、エナンチオマーの選択的吸着現象とリンクさせる触媒反応の検討として、ビシクロ環骨格によりコンホメーションを固定され、かつ異方的立体障害を持つジアミンおよびアミノチオールを原料として、モノスルホニル体、チアゾリン体、チオエーテル・イミド体を合成し、それぞれに対して、不斉反応の検討を行った。 ジアミンモノスルホニル体によるルテニウム錯体を用いての、ケトン類の水素移動型還元、チアゾリン体を配位子として用いての不斉Diels-Alder反応、チオエーテル・イミド体を不斉配位子としたπアリル位置換反応を試み、いずれも高い不斉選択性を確認した。特に、水素移動型還元反応においては、0.5mol%という少量の触媒で、高収率・高選択性が実現できるだけでなく、従来の触媒と比較して、基質の立体障害の影響を受けにくいという特性も明らかに出来た。 これら3種の化合物は、すべて含窒素塩基性化合物であり、メタクリル酸などの重合性モノマーとの相互作用が強く、さらには、コンホメーションの自由度が低いため、モレキュラーインプリンティングにおける鋳型として極めて適していると考えられる。さまざまな、重合条件による機能性ポリマーの作成に関しても検討し、選択的吸着に関する調査を行い、触媒反応の制御の可能性を探った。
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