平成15年度に、分子内に芳香環を有する種々のビニルエポキシドを合成し、ルイス酸によるFriedel-Crafts環化を検討した。結果として、6-エキソ環化ではなく7-エンド環化が優先的に進行し、高収率で炭素原子からなる7員環成績体を与えること見出した。本年度はこの知見を参考に、側鎖部分に窒素原子を含むビニルエポキシドを合成し、そのFriedel-Crafts環化による複素環の合成を検討した。ベンジルアミン誘導体をトシル化後、アルキル化をおこない、trans-1-benzylamino-4-chloro-2-buteneを合成した。置換反応により、trans-1-benzylamino-4-hydroxy-2-buteneに変換した後、エポキシ化することにより、対応するエポキシアルコール体に導いた。さらに、Dess-Martin酸化後、Wittig反応を順次行うことにより、目的とするビニルエポキシドを合成した。最初、ルイス酸としてBF_3を用いビニルエポキシドの反応を検討したところ、目的の7-エンド環化はほとんど進行せず、芳香環が転位したアミナール化合物が主生成物として得られた。次にTMSOTfをルイス酸として用い、再度ビニルエポキシドの環化を検討したところ、7-エンド環化が選択的に進行し、高収率で2-ベンザゼピン誘導体が生成した。いくつかの実験的根拠から、2-ベンザゼピン誘導体の生成は単純な機構ではなく、スピロ型フェノニウムカチオン中間体を経由したタンデム反応であると考えられる。
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