研究概要 |
最近、Acrocomia mexicanaより単離されたCoyolosaは、二つのD-ピラノースが6位でエーテル結合した非常に稀な構造をしているが、tolbutamideと同等の血糖降下作用が認められており、新しい糖尿病治療薬の候補として興味深い対象である。残念ながら、D-ピラノースの立体化学について明確な知見がなく、Coyolosaの絶対構造の確定には至っていない。そこで、様々な6,6-エーテル結合糖を合成し、それらの生物活性を検討することによって、Coyolosaの構造確定及び新規生物活性物質の創出をめざした。予備的な実験から、強アルカリ性条件を用いる既存のエーテル合成法では、満足のいく結果が得られないことが明らかになっていた。そこで、より温和な条件下進行する新規エーテル結合形成反応の開発をめざし、還元的エーテル化反応を応用することとした。これによって糖の6位同士が結合した6,6エーテル結合糖を収率良く化学合成することに成功した。生物活性を検討していただいた結果、D-マンノースが6位同士で連結したエーテル結合糖にCoyolosaと同等の生物活性があることが明らかになった。恐らく、このD-マンノース連結糖がCoyolosaであろうと推定している。さらに、本エーテル結合形成反応の汎用性を高めるべく、糖の6位だけでなく他の第二級水酸基を用いた検討も行なった。これまで用いてきた6位水酸基は第一級水酸基であるため、反応性も高く非常に効率良く反応が進行するが、第二級水酸基の場合は立体障害もあるためか、反応条件を精査する必要があった。これについては、様々な還元剤を用いることで反応性の低い水酸基によるエーテル化反応を収率良く行なえることが明らかになった。また、本反応は比較的不安定な糖類を用いても高い収率を与えることから、従来用いられてきた塩基性条件下で行われるWilliamsonのエーテル合成法に匹敵すると考え、一般的なアルデヒドとアルコールについて同様な方法を試みた。その結果、本反応が一般性が高く、実用的な反応であることを示すことができた。
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