海洋生物から単離されたハリクロリン及びピンナ酸はそれぞれ、細胞接着分子の産生阻害活性あるいは細胞質ホスホリパーゼ阻害活性を有することから疾病治療薬開発のリード化合物として期待されている。アシルニトロソ化合物の分子内閉環反応による6-アザスピロ[4.5]デカン共通骨格構築を機軸とするハリクロリン及びピンナ酸の立体選択的合成法の確立を目的として本研究を行い、当該年度においては以下の結果を得た。 シクロペンテン環上のアリル位にアルコキシ置換基を有するアシルニトロソ化合物のanti面選択的分子内エン反応により立体選択的に得られた6-アザスピロ[4.5]デカン体のC-5位への立体選択的エチニル化について検討したところ、オレフイン還元の後にリチウムアセチリドによる求核付加、続くヒドリド還元を行うことにより首尾よく達成することができた。さらに数工程を経て5(R^*)-アルコキシエチル-6-アザスピロ[4.5]デカン-13-オンに変換した。次いで、C-13位への(R^*)-2-アルコキシ-1-メチルエチル基の立体選択的導入について検討した。立体障害のため、C-13カルボニル基へのアルキル基の導入は当初難航したが、アリルあるいはクロチルGrignard試薬を用いることにより達成された。ここに得られた13-クロチル体よりさらに数工程を経てピンナ酸提出式のC-3〜C-15骨格に相当する立体配置を備えた14(S^*)-メチル-オクタヒドロシクロペンタ[i]インドリジノンに導くことができた。しかし、本研究の途上でピンナ酸のC-14立体配置が8配置に訂正されたため、次に13-アリル体より出発し、3環性ラクタム構築の後、立体選択的水素化及びC-14メチル化を経てハリクロリン及びピンナ酸訂正式に共通する立体配置を備えた14(R^*)-メチル-オクタヒドロシクロペンタ[i]インドリジノンを合成することができた。
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