研究概要 |
医薬品には窒素原子を含むものが多く見られ、従来、含窒素天然物は医薬品開発における重要な存在とみなされてきた。そのうちでも、含窒素スピロ構造を有する化合物には顕著な薬理活性を示すものが多く知られ、たとえば武田薬工グループにより単離・構造決定されたTAN1251系の化合物はcholinergic作用を有し、ムスカリンM_1サブタイプ受容体に対し選択的拮抗薬として働くことから抗潰瘍薬として期待されている。TAN1251Aの合成においてはチロシンとグリシンから得られる第二級アミンを原料として、超原子価ヨウ素試薬を用い、新規な炭素-窒素結合形成を鍵反応とする簡易合成法の確立に成功したが、本合成法では側鎖の導入が合成の最終段階になっていた。そこで今年度はチロシン二量体から誘導される第二級アミン類とフェノールの分子内酸化反応による炭素-窒素結合形成反応を鍵反応としてTAN1251系化合物の基本骨格をなす含窒素スピロ構造の簡易構築を行い(-)-TAN1251C及び(-)-TAN1251Dの効率的合成に成功した。 また、昨年度に行ったセクリニンの合成においては、A,C及びD環を先に構築し、最後にB環を構築するという戦略であった。今年度の計画は光学活性合成素子として入手容易なピログルタミン酸を原料に用いて、2,5-二置換ピロリジン誘導体を合成し、閉環によりインドリチジン骨格を合成した後に、最後にシクロヘキサン環とラクトン環を一挙に構築しようとするものである。本法によれば、B環とC環の立体化学はあらかじめ決定することができると共に薬理活性評価に必要な種々の誘導体合成も可能になると考えられるが、種々の反応条件の検討にも拘らず、本合成においては最終工程に困難さを伴い成功するには至らなかった。
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