研究概要 |
双環性シクロペンタノンは数多くの天然有機化合物の重要な部分構造であるだけでなく、様々な生理活性化合物の合成前駆体としても有用なことから、その効果的合成法開発に向けた種々の試みが行われている。アクリル酸エステル誘導体から一挙にシクロペンタノン環を形成する効率的方法として、電気分解やアルカリ金属などを使用する連続的な還元的環化-Dieckmann縮合があるが、それらの分子内反応への適応による双環性シクロペンタノン誘導体合成は知られていない。本研究はアクリル酸エステル誘導体を利用する有用な環化反応の開発とその応用による生理活性天然物の新規合成ルート開発を目的に行われた。最初に見出したのは、分子内に2つのアクリル酸エステル部位を有する化合物とSmI_2の反応で、この反応により様々なビシクロ[3.3.0]オクタノン誘導体及びビシクロ[4.3.0]ノナノン誘導体が合成できる。この反応は中員環が縮環したシクロペンタノンの合成には適さなかったが、さらなる検討の結果、これらの合成にも適応できる1,2-シクロブタンジカルボキシラートのSmI_2による環拡大反応を見出した。生理活性天然物合成への応用研究では4つの化合物の合成が達成され、これらの方法の有用性が示された。すなわち、アクリル酸エステル誘導体のSmI_2が誘起する環化反応の利用によりヒルスタン型セスキテルペンhirustene、エレマン型セスキテルペンeleman-8β,12-olideの形式全合成、及びケトン及びエステルを備えたアクリル酸エステル誘導体のSmI_2による連続的環化反応を鍵ステップとする植物ホルモンgibberellin A_1の全合成が達成された。
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