研究概要 |
HTLV-Iはエイズの原因ウイルスであるHIVとよく似たレトロウイルスで,ヒト成人白血病(ATL)やHTLV-I脊髄症(HAM)を引き起こす病原ウイルスである.HTLV-IはHIVの場合と同じようにウイルス固有のアスパルティックプロテアーゼを有しており,その阻害剤は大いに上記疾病の治療薬として期待出来る.本計画では完全な化学的手法によりHTLV-Iプロテアーゼ誘導体を合成し,阻害剤の開発に役立てることを目的とし,HIVプロテアーゼの合成に成功したチオールとアルキルハライドの反応によりスルフィド結合を得るケミカルリゲーション法を用いて,HTLV-Iプロテアーゼ誘導体の合成を行った.またこれを用いた阻害剤の評価系を確立した. 1-3)従来の固相ペプチド合成法が適用できる新規メルカプトアミドペプチド合成用樹脂担体をデザインし,メルカプトアミドペプチドをFmoc型固相合成にて合成した.また常法にて合成したブロモアセチルペプチドとケミカルリゲーションを行い,HTLV-Iプロテアーゼ誘導体を単一の目的物として得た. 4-5)常法にてHTLV-Iプロテアーゼの基質を合成し,酵素活性を評価したところ,文献値に匹敵する酵素活性を有することを確認した. 6)我々の有する多種のプロテアーゼ阻害剤による酵素阻害活性を測定,評価した.しかしHIVプロテアーゼ阻害活性は比較的良好な結果を示すのに比べHTLV-Iでは著しく弱い活性を示すものしか見いだせなかった.HTLV-Iには新たに設計した阻害剤が必要であり,本計画で合成した酵素誘導体が役立つ事が確認できた.
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