研究概要 |
連続するヘテロ原子が関与する新規転位反応の開発研究として本年度は,下記に示す転位反応について検討した. 1.エナミンが関与する転位反応 オキシムエーテルのアシル化により容易に得られる不飽和エナミド類は緩和な条件下で[3,3]-シグマトロピー転位反応が進行することを見出し,この手法をベンゾフラン類の合成に応用した.すなわち,ο-アリ-ルオキシムエーテル類を無水トリフルオロ酢酸で処理すると,緩和な条件下でオキシムエーテル類のアシル化反応,[3,3]-シグマトロピー転位反応,閉環反応が連続的に進行し,効率的なベンゾフラン類の新規合成法の開発に成功した.この研究については,すでに論文(Org.Biomol.Chem.,2003,1,254-256.)に掲載した. 2.イミンが関与する転位反応 既にアリルおよびベンジルヒドロキシメートを塩基で処理すると2-ヒドロキシオキシムエーテル(転位体)が高収率で得られることを見出している.さらに反応性はオキシムエーテル部分の立体配置によって異なることも明らかにしている.本年度はこの転位反応を鍵反応とする神経毒アミノ酸の一種であるDysiherbaineの形式合成を行った.すなわち,フラン環を有するヒドロキシメートから出発して,転位反応によりアミノアルコール部分を合成し,最後にフラン環の酸化を経由してフロピラン環を構築してDysiherbaine合成の鍵中間体を合成した.この研究に関しては,すでに論文(Org.Biomol.Chem.,2003,1,772-774.)に掲載した.
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