研究概要 |
連続するヘテロ原子が関与する新規転位反応の開発研究として,本年度は下記に示した転位反応について検討した. (i)イミンが関与する転位反応 既にアリルおよびベンジルヒドロキシメートを塩基で処理すると2-ヒドロキシオキシムエーテル(転位体)が高収率で得られることを見出している.本年度は種々のヒドロキシメート類の転位反応を行い,この反応における置換基効果を明らかにした.この研究についてはすでに論文(Tetrahedron,2004,60,3893-3914)に掲載した.さらに,光学活性アミノアルコールの合成を目指してジアステレオ選択的なイミノ1,2-Wittig転位反応も検討した.本年度は,種々の不斉補助基を有するヒドロキシメート類の転位反応を検討し,イミノ1,2-Wittig転位反応にもっとも有効な不斉補助基を選択した. (ii)エナミンが関与する転位反応 前年度にオキシムエーテル類のアシル化反応により得られるエナミン類の[3,3]-シグマトロピー転位反応を鍵反応とするベンゾフラン類の合成法を開発した.今年度はこの方法を2位にアリール基を有するベンゾフラン類の合成へ応用した.その結果,アリール基上の置換基の種類にかかわらず,いずれも反応は効率的に進行した.さらに,2位にアリール基を有する天然物,すなわち抗菌作用を有するStemofuran AおよびEupomatenoid 6の合成も行った.この方法の特徴は,ベンゼン環上に存在するフェノール性水酸基の保護を必要としないため,高収率かつ単行程で天然物合成を達成できる点である.本研究についてはすでに論文(Org.Lett.,2004,6,1761-1763)に掲載した.
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