研究概要 |
今年度は下記の3種の転位反応に重点をおいた研究を行なった. (i)イミンが関与する転位反応 本年度はこの転位反応のジアステレオ選択的反応について検討した.すなわちヒドロキシメート類のオキシムエーテル部分に種々の不斉補助基を導入した基質を用いて転位反応を行なった.さらに不斉補助基の種類とヒドロキシメート類の置換基効果も明らかにした.以上の結果を踏まえてこの手法を光学活性なアミノアルコールの合成に応用した.特に免疫療法の分野で新しい化学療法剤としての期待がもたれているCytoxazoneの不斉合成を行なった. (Tetrahedron Lett.,2005,46,4015-4018.)さらにカルボキシル基等価体を有する基質の転位反応を検討し,アミノ酸類の簡便な合成法も開発した.(Chem.Pharm.Bull.,2005,53,355-360.) (ii)エナミンが関与する転位反応 前年度にオキシムエーテル類のアシル化反応により得られるエナミン類の[3,3]-シグマトロピー転位反応における置換基効果を検討した.今年度は核間位に置換基を有するジヒドロベンゾフラン類の合成法を確立し,さらにこの手法を応用した生物活性天然物の合成を行なった. (iii)ヘテロ原子を有するアミン類が関与する転位反応 アミン窒素上に比較的電気陰性度の大きなヘテロ原子を有するアミン類をルイス酸性のある試薬と反応させると,アミン窒素上で置換反応が進行する可能性がある.今年度は単純なアルコキシアミン類を基質として用い,ルイス酸性のある還元剤および種々の求核剤との反応を検討した結果,転位反応に続いてアルキル化反応も進行することが明らかになった.
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