研究概要 |
今年度は下記に示した3種の転位反応に重点をおいた研究を行った。 (1)エンヒドラジン類が関与する転位反応 以前行っていたエンヒドラジン類の転位反応を無溶媒中および水中で検討した。その結果、有機溶媒中とほぼ同様な結果が得られ、環境にやさしい反応へ展開することができた(Tatrahedron,2006,62,3629.)。 (2)オキシムエーテル類が関与する転位反応 前年度にオキシムエーテル類のアシル化反応により得られるエナミン類の[3,3]-シグマトロピー転位反応における置換基効果を検討した。今年度は核環位に置換基を有するジヒドロベンゾフラン類の合成法を確立した。すなわち、電子吸引基を有するオキシムエーテル類をTFAAのみと反応させると、核間位に置換基を有するジヒドロベンゾフラン類を選択的に得ることに成功した。これに対して、TFAT-DMAPと反応させると、選択的に置換基の反対側に転位したジヒドロベンゾフラン類が得られることを見出した。さらにこの手法を応用した生物活性天然物Lunarineの形式合成を行った(Synlett,2006,3415.)。 (3)アルコキシアミン類が関与する転位反応 アミン窒素上に比較的電気陰性度の大きなヘテロ原子を有するアミン類をルイス酸性のある試薬と反応させると、アミン窒素上で置換反応が進行する可能性がある。今年度は単純なアルコキシアミン類を基質として用い、ルイス酸性のある還元剤および種々の求核剤との反応を検討した。その結果、有機リチウムおよび有機マグネシウム試薬との反応において、ドミノ型脱離-転位-アルキル化反応が進行することを見出した(Synlett,2006,2219.)
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