研究概要 |
1.1-アザヘキサトリエン系の電子環状反応へのマイクロ波の影響について まず、環化反応に及ぼす置換基効果をみる目的で、ベンゼン環上に電子供与基としてはメトキシ基、電子吸引基としてはニトロ基を導入し、アルケン部分には電子供与基としてメチル基、電子吸引基としてエステルを導入した1-アザヘキサトリエン系となるアルドオキシム体を種々合成した。これら基質に対して、従来法とマイクロ波照射下での熱電子環状反応を実施し、比較検討した。更に、環化反応への反応溶媒(toluene, bromobenzene, o-dichlorobenzene, N,N-dimethylform amide)と反応温度(150℃,180℃,210℃)の影響についても検討した。 その結果、反応溶媒はo-dichlorobenzene、反応温度は180℃に設定する条件が最適条件であることがわかった。この条件を用いて、従来法とマイクロ波照射下での熱電子環状反応を比較したところ、基質によって差はあるものの、いずれも反応時間のかなりの短縮がみられた。さらに反応収率も、ほぼ同等かかなりの収率向上がみられた。この結果より、電子環状反応に対するマイクロ波照射の効果は、反応時間、収率の面で有効に機能していることがわかり、新しい有機合成反応の一手法を提供することができた。特に、ベンゼン環上に電子吸引基(ニトロ基)がある場合環化反応の反応性が低下することが予想されたが、それに反し、短時間かつ良好な収率でイソキノリン誘導体を与え、ある程度の量産が可能であった。更に、このニトロイソキノリン誘導体は、イソキノリンからのニトロ化では合成できないものもあり、医薬品素材としての供給も可能であると考える。 2.抗腫瘍性bicolorineの全合成研究 上述の確立した条件を活用し、本化合物のbenzo[c]isoquinoline骨格合成に成功している。最終工程のメチル化を現在検討しているところである。 以上の内容について、現在論文作成中である。
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