研究概要 |
マイクロ波(MW)照射下の有機合成反応の特徴は、反応速度の加速、収率の向上、あるいは無溶媒下でも進行することなど、反応系内を均一に加熱するため再現性が高い点などが挙げられる。その中で、ペリ環状反応への応用は、熱を利用するDiels-Alder反応、Claisen転位反応等への活用が当初から検討され、反応時間の短縮、あるいは収率の向上などその有用性を報告している。しかし、その一つである熱電子環状反応への応用例は、これまでに報告されていなかった。今回、1-アザヘキサトリエンに対する熱電子環状反応により構築できるイソキノリン骨格合成に新たにMWを利用し、有機合成の一手法として、MW照射下熱電子環状反応を確立することを目的に次の4項目の研究を実施した。 (1)アザヘキサトリエン系の電子環状反応へのマイクロ波の影響について (2)インターロイキン-5産生抑制作用をもつfuro [3,2-h] isoquinoline系天然物TMC-120A, B, Cの合成研究と活性試験 (3)抗腫瘍性bicolorlneの全合成研究 (4)抗腫瘍性2一アザアントラキノン系アルカロイドscorpinoneの全合成研究 本研究の結果よりMW照射下での熱電子環状反応を活用した新規イソキノリン合成法を確立することができた。その応用として、イソキノリン骨格を有する天然物の合成を行い、フロイソキノリンアルカロイドTMC-120AおよびB、フェナンスリジンアルカロイドtrispheridine、2-アザアントラキノンアルカロイドscorpinoneの合成を達成できた。よって、MW照射下での熱電子環状反応を活用したイソキノリン合成は有効な縮合複素環化合物の合成方法になるものと考えている。
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