本年度は、まず電気刺激により応答する基板材料の創製と放出薬物の固定化ならびに電気信号による薬物の放出制御について検討を行った。電極との直接反応により薬物を放出することが可能な素子は、基板電極上にポリアニオンであるナフィオンを被覆した後、表面キャスト法によりカチオン性薬物を静電的相互作用を利用し基板電極上に固定化することにより作製できた。一方、電子移動メディエーター-放出薬物複合型の素子は、放出薬物を対イオンとして持つビピリジニウム塩を置換したピロール誘導体を創製し、ピロール部位の電気化学的重合反応により基板電極上へ固定化することにより作製できた。次いで、これら作製された電気刺激薬物放出機能を有する素子について、電気信号による薬物の放出制御について検討した。その結果いずれの素子においても定電位電解法では、印加電位を卸御することにより、固定されている薬物の放出量を徐放制御できることが明らかとなった。一方、定電流電解法では設定電位を制御することにより、固定されている薬物の放出量を徐放制御できることが明らかとなった。さらに、設定電流を微小化にすることにより、固定されている薬物の放出開始を遅延化することが可能であった。これは微小電流に設定することにより、放出薬物あるいは放出薬物を固定化している基材(電子移動メディエーター)の酸化あるいは還元反応が起こる電位に達するまで時間を要するために、固定されている薬物の放出開始に遅延化が生じたと考えられる。
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