前年度の研究成果をもとに、生体センサとの組み合わせたコントロールド・リリースシステムの構築ならびに電気刺激薬物放出マイクロチップの開発を行った。 まず、電気刺激薬物放出素子とグルコースセンサとを組み合わせ、経時的にモニタリングを行いながら糖尿病治療薬であるインスリンの電気的な放出制御を試みた。その結果、グルコースセンサにより溶液中のグルコースが治療域に達したとき、電気刺激薬物放出素子よりインスリンが放出されることが明らかとなり、電気刺激薬物放出素子と生体センサの一元化を図ることが可能であった。次に、長時間周期で薬物送達できることが可能なマイクロチップの開発を目指し、基板にシリコンを用い、マイクロインジェクションやインジェットプリンタの技術を駆使し、少量を正確に充填できるよう貯蔵庫をピラミッド状にし、その表面を酸素や塩素イオン等による腐食を防ぐことが可能な金膜で覆い陽極と、陰極もまた腐食を防ぐためシリコンジオキシフィルムで覆った。このマイクロチップの陽極上に、電気刺激により薬物が放出する機能性材料を固定化し、作製された電気刺激薬物放出マイクロチップについて、生体内での腐食性を調査した。その結果、生体内と同様な成分の溶液中では、作製された電気刺激薬物放出マイクロチップは何ら影響を受けずに腐食されないことが明らかとなった。現在、この電気刺激薬物放出マイクロチップ陽極に与えられた電気信号容量に応じた薬物の放出制御を検討し、このマイクロチップに電源とグルコースセンサを組み込み、電気刺激薬物放出マイクロチップが一元化され、コントロールド・リリースのオートメーション化が可能なことを明らかにしている。
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