研究概要 |
プリオンタンパク質のアミノ末端側領域には、Pro-His-Gly-Gly-Gly-Trp-Gly-Glnという8個のアミノ酸からなる配列(プリオンオクタペプチド,OP)が4回繰り返して現れる領域(OP4)があり、この配列は種間で良く保存されている。OP4は銅イオンに高い親和性を示し、Cu(II)をCu(I)に還元する活性を持つ。本研究は、酸化還元の反応中心として、また構造制御装置としてもユニークなOP4の作用メカニズムを明らかにすることを目的とした。 OP4による銅還元の速度論的解析およびラマンスペクトルによる複合体の構造解析から、OP4がCu(II)還元活性を示すためには、OP配列が少なくとも4回繰り返され、4個のHis残基のイミダゾール窒素が1個の銅イオンに配位する必要があることがわかった。この構造は、特にpH6付近の弱酸性条件で形成され、中性よりアルカリ性側のpHでは、OPのHisだけでなくアミド基の窒素も配位子となる。このため、OP4のCu(II)還元活性は弱酸性で最も高くなる。プリオンタンパク質は細胞膜表面に結合し、エンドソームに取り込まれるが、Cu(II)還元活性は細胞膜表面よりもエンドソーム内の方が高いと考えられる。プリオンタンパク質は細胞表面においてCu(II)と結合し、エンドサイトーシスによりエンドソーム内に取り込まれてCu(II)を還元し、生じたCu(I)を銅輸送タンパク質に受け渡す役割を持つと予想される。
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