研究概要 |
柔軟なリガンド分子として6員環構造を有する単糖を選択し、これに結合するたんぱく質として酵素触媒作用を示さないレクチンを用いた。測定には表面プラスモン共鳴センサーを用い、様々な単糖およびその誘導体について結合活性を定量した。リガンド構造に関し、これまでに開発したコンフォメーション探索プログラムにて計算した分子構造のBoltzmannセットに対してその柔軟性を評価するため二面角空間中の1次および2次のMinkovski距離に基づく階層的クラスター分析を行った。しかしながら、分析結果はサンプリングに対してクラスター数のばらつきが大きく、不安定であった。環構造を有するときには距離を定義する二面角成分には1次独立が成立していない点に着目し、重原子すべての二面角について主成分(PC)分析を行った。非環構造では互いに独立な二面角成分のg(+),trans, g(-)の3領域が交叉するクラスターから構成される超空間立方体となるから、PC分析においても3次元プロットすると正6面体構造が得られる。これに対して中規模の環構造ではtrans構造をとらないで、g(+),g(-)近傍を経由した1次従属な空間連続模様が発生する。Hendrickson(1967)およびCramerとPople(1975)の報告によれば6員環での独立成分は位相幾何学的には球面構造を形成する。このような解析手法を用いた結果から多様体空間上での非Eucrid距離よりも短絡した距離を用いたためクラスター分析の結果が不安定になったと考えられた。容量が不均一なクラスターを階層化することに本質的意味は見いだされず、むしろ分子の可能なコンフォメーションの超空間多様体上での占有率をパーコレーション統計にて扱うことで分子の柔軟性を定量的に取り扱いうる可能性が見いだされた。以上のような結果から、レクチンとの結合強度fと多様体の占有プロットp(x)を乗じたものをサンプリングした化合物すべてについて積算し、得られる密度関数Σfp(x)がレセプターマッピングの厳密解として有用であると示唆された。
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